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前十字靭帯断裂(Cranial cruciate ligament rupture: CrCLR)

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前十字靭帯断裂とは

前十字靭帯断裂は犬で最も一般的な整形外科疾患の1つです。ヒトの前十字靭帯断裂の多くはスポーツ外傷が原因である一方、犬では変性性変化や加齢性変化が徐々に起こり、そこに力学的ストレスが加わって靭帯が損傷・断裂すると考えられており、不可逆的かつ進行性の病気です。前十字靭帯を断裂した症例の20〜77%に内側半月板の二次的な損傷が認められ、半月板損傷を伴うケースでは一般的に重度の跛行を示し、適切に治療されない場合には予後に影響します。

疫学

外傷による急性断裂は4歳以下であることが多いのに対し、慢性経過の症例は5〜10歳で発症します。小型犬は大型犬よりも高齢で罹患する傾向にあり、10歳以上で発症する場合もあります。
ロットワイラーやニューファンドランド、ラブラドールレトリバーなどの大型犬・超大型犬で好発しますが、これらは主に欧米の研究を元にしたデータであり、国内ではチワワやトイプードル、ポメラニアン、パピヨン、柴犬などで発生する一方、ミニチュアダックスフンドやグレーハウンド、シーズー、ミニチュアシュナウザー、ペキニーズなどの犬種では靭帯断裂が起こりにくいことが分かっています。

症状

片側性あるいは両側性の後肢跛行を示します。症状は急に起こることが多く、散歩中や低いところからのジャンプなど軽度の外力エネルギーによって発症することがほとんどです。罹患肢を投げ出したように座ることがあり(sit test)、これは膝関節の屈曲域が低下することによって起こります。

診断

触診検査により患肢の筋肉量低下、膝関節内側面の肥厚(medial buttress)、関節液貯留による関節腫脹などが認められます。脛骨圧迫試験や脛骨前方引き出し試験は前十字靭帯断裂の診断のために古くから行われている検査で、膝関節の不安定性を検出する目的で実施します。脛骨前方引き出し試験では、伸展位と屈曲位のどちらにおいても脛骨の前方変位があれば完全断裂が示唆され、屈曲位のみで前方変位が認められた場合には頭内側帯の部分断裂が示唆されます。しかしながら、部分断裂の約半数は脛骨前方引き出し試験が正常であったとの報告があり、現在ではこれらの所見とともにレントゲン検査でfat pad signや変形性関節症を確認することにより非常に高い精度で診断できます。近年、超音波検査や関節鏡検査、CT検査、MRI検査などが診断ツールとして有用であることが報告されていますが、それぞれに限界点があり、前述の詳細な身体検査やレントゲン検査所見が手術のための診断材料として十分であることがほとんどです。

治療

  • 関節外法

大径ナイロンによる種子骨・脛骨の安定化を図る方法で、関節包の外側にインプラントによる縫合を行います。反応性線維組織により膝関節が安定化します。従来から行われている方法ですが、中・大型犬ではインプラント破損の危険性が高いことが分かっています。

  • 脛骨高平部水平化骨切り矯正術(Tibial plateau leveling osteotomy: TPLO)

前十字靭帯は脛骨の前方変位を抑制しており、前十字靭帯が断裂すると脛骨に負重が加わった際に脛骨が過度に前方へ移動します。この脛骨前方推進力は脛骨高平部の傾斜角に比例して大きくなるため、脛骨近位を骨切りおよび回転させて傾斜角度を矯正し、脛骨の推進を制御することがTPLO手術の目的です。15kg以上の中・大型犬では、関節外法よりもTPLOの方が早期の負重が可能で、手術に用いるインプラント(ステンレス製プレート)の破綻が起こりにくいなどの点で優れています。以前は大型犬用のプレートしかありませんでしたが、最近では小型犬用のプレートも販売されるようになり、小型犬へのTPLO手術も一般的になっています。

前十字靭帯断裂と併発しやすい疾患

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